規約解説

食用塩公正競争規約、施行規則のポイント解説

 食用塩公正競争規約は、食品の表示に関する関係法令に従って作られているので、この規約を順守すれば法令に従っていることになります。従来は関係法令を個別に見ながらチェックしなければなりませんでしたが、今後は食用塩公正競争規約をきちんと守れば法令を順守していることとなるため安心です。規約には、法令で規定された表示以外に、消費者等から表示することを求められて規定された表示もあります。
 なお、加工食品の統一された表示ルールとして食品表示法が2015年4月に施行され、法令に規定された食品表示基準に従った表示への変更が必要となり、栄養成分の義務化に対応して2016年11月に、また、一括表示の原料原産地表示制度に対応して2019年6月に規約・施行規則が改定されました。食品表示基準に従った表示への変更は、法令の猶予期間と同様に栄養成分表示は2020年3月末日まで、一括表示の原料原産地表示は2022年3月末までの猶予期間があります。

1)規約の対象になるもの (規約・規則第2条

一般消費者に販売される包装した食用塩です。次のような塩は規約の対象になりません。

  • 包装されていない塩,散塩
  • 塩化ナトリウム含有量が40%未満
  • 液体タイプ ... 水塩
  • 食品が混合された塩...ごましお,抹茶塩,塩こしょう
  • 工業用・融雪用・浄水器再生用 等

2)商品の広告となる表示の全てが規約対象です。 (規約・規則第2条

商品の個装表示、広告、パンフレット、ホームページ、ネット販売の案内など幅広く適用されます。この点はJAS法とは違います。

3)一括表記の書き方 (規約・規則第3条

  1. 名称は「塩」または「食塩」です。
  2. 原材料は、塩の製造に使用された「海水」、「海塩」、「岩塩」、「湖塩」、「天日塩」または「温泉水」の名称のいずれかが記載されます。原材料は生産工場に持ち込まれた原料の最初の状態を指します。 「海塩」とは海水を原料とした塩を工場の初期原料とした場合であり、天日塩の溶解再結晶では、「海塩」または「天日塩」となり、「海塩」と書くか「天日塩」と書くかは自由です。天日塩の原料は海水ですが、「海水」と書くことはできません。 塩の主原料に原料原産地を記載しますが、塩化ナトリウムを含む原材料を複数使用している場合はすべての原材料に原料原産地を記載します。(2018年の食品表示基準改正により、義務化されました。但し、2022年3月末日まで猶予期間があります。)
  3. 賞味期限と保存方法は原則として書きません。食品表示基準で認められています。
  4. 原産国名は輸入品に限り記載されます。
  5. 製造者、輸入者、販売者の区分は、食品表示基準に従い記載されます。食品表示法の施行により、新たに区分に加工者が追加されました。製造所固有記号は一つの商品を2工場以上で製造又は加工している場合だけ使用できます。

4)「製造方法」を義務表示としました。 (規約・規則第3条

  1. 食用塩公正競争規約では「製造方法」を必要表示事項に定めています。「製造方法」には原材料の説明と工程の概要が工程順に書かれます。
  2. 原材料名には、一括表示と同じく、使用された原材料の後ろにカッコ書きで原産地名が記載されます。2種類以上の原材料で塩を作った場合(例:塩を海水に溶かした場合)は、商品の塩化ナトリウム分のうち何%がそれぞれの原料から来ているかが記載されます。塩を原料とした商品の場合(二次加工品)は、原料とした塩の製造方法の概要がカッコ書きで記載されます。 原材料の記載順番は、塩の原料、添加物の順番で、多い順に書きます。
  3. 工程は、決められた用語で工程順に記載されます。用語は17種類の用語です。これ以外の用語でなければ説明できない工程については、協議会で適切な用語を検討して使用する場合があります。工程用語については、次章(用語解説)を参照してください。

5)地名の付いた商品名 (規約・規則第4条

地名を付けた商品名は、その地域で生産した塩に使用できます。例えば、沖縄の海水を使って沖縄で作った塩に、「沖縄の塩」という品名を付けることは何ら問題はありません。同様に日本の海水を使って日本で最終包装まで行った商品に、「国産塩」、「国内塩」と書いても問題はありません。
地名が付いた商品にその地名以外の原材料を使った場合は、その地名以外の原材料を使っている旨を商品名と同一視野内に注意書きをしなければなりません。例えば、「原材料にメキシコ産を使用」などです。

6)海洋深層水の表記上の注意 (規約・規則第4条

海洋深層水の使用を表示したい場合、同一視野内に採水地と使用割合を明記すれば記載することができます(使用割合100%は省略可)。ただし、海洋深層水を使用することで何らかのメリットがあることを記載したい場合、その合理的根拠を明確に示す必要があります。

7)にがりの表示 (規約・規則第4条

「にがりを含む」旨の表示は、マグネシウムが0.1%以上含まれれば、一括表示、製法表示の枠外に記載することができます。 「にがり」の定義は、海水または塩湖水を濃縮して塩化ナトリウムを析出した残液であり、Na,K,Mg,Ca,Cl,SO4,Brを主成分とし、それ以外の成分を1%以上含有しないものです。

8)「岩塩」の表示 (規約第4条

 商品の表面(または正面)に「岩塩」の表示がある場合、同一視野に入る場所に、「天然の岩塩鉱から採掘された塩」(採掘法によるもの)か、又は「岩塩鉱の塩を一旦溶かした塩水から製造した塩」(溶解法によるもの)か、どちらの塩であるかの表示がされます。

9)栄養成分表示について (規約・規則第6条

栄養成分表示は、熱量、タンパク質、脂質、炭水化物、食塩相当量の順で書かれ、その次に人体に必要な栄養成分として指定された成分(Ca,Mg,K,Fe,Cu,Zn,,Cr,Se,Mn,I,P)のうち表示したい成分を書き、次にそれ以外で表示したい成分を区分して記載します。 塩に指定された成分が含まれることを強調する表示をする時は、栄養成分表示に含有量を記載しなければなりません。指定された成分には、「含む」または「豊富」であることを記載する場合の含有量基準値が規定されている成分もあります。
注)2015年の食品表示法施行により、栄養成分表示は義務化されました。但し、2020年3月末日まで猶予期間があり、また、一部記載免除規定があります。

10)低ナトリウム塩の表示 (規約・規則第3条

塩化ナトリウム以外の成分が25%以上含まれる商品には、「低ナトリウム塩」と記載されます。一括表示の原材料名には、塩化ナトリウムの主原料以外に1%以上含まれる添加物などの原料が記載されます。

11)用語の使用基準 (規約・規則第5条

海塩、岩塩、湖塩、天日塩、焼塩、藻塩、フレーク塩については次の定義に合致する場合に表示できます。

海塩:
「海塩」の用語は、海水を原料として製造された食用塩に限り表示することができます。
岩塩:
「岩塩」の用語は、天然の岩塩鉱から採掘された食用塩及び岩塩鉱の塩を一旦溶かした塩水又は地下塩水から製造した食用塩に限り表示することができます。
湖塩:
「湖塩」の用語は、塩湖から採取又は採掘された食用塩に限り表示することができます。
天日塩:
「天日塩」の用語は、塩田、流下盤、枝条架、ネット等を用いて、主に太陽熱又は風力によって水分を蒸発させる方法により結晶化した食用塩に限り表示することができます。従って、地下かん水、湖塩など、海水以外の原料を天日で濃縮・結晶化した塩も天日塩という名称が使えます。
焼塩:
乾燥を目的とする高温処理は焼き塩とは言いません。温度380℃以上では高温焼塩、380℃未満では低温焼塩と言います。
藻塩:
海水の中に海藻を浸漬して製塩したもの又は 海藻抽出物、海藻灰抽出物もしくは海藻浸漬にがりを 添加した場合に表示できます。
フレーク塩:
顕微鏡下で確認し、麟片状結晶が大部分を占める食用塩に限り使用できます。

12)特級、特選の用語の使用 (規約・規則第5条

比較対象品(並み品)がある場合、特級、特選などの用語が使えます。ただし、明確な規格の差があり、明文化されていることが必要です。比較対象品の販売が極めて少なくなった場合は使えません。

13)自然、天然が塩にかかる言葉は使えません (規約・規則第5条

自然塩、自然海塩、天然塩などの言葉は使えません。自然製法、自然結晶などの類似用語も使えません。

14)不当表示として禁止されること (規約・規則第6条

  • 虚偽の表示、著しく優良と誤認される表示はできません。
    実際と違う、あたかもよいように思わせる、という消費者をだます表示はできません。著しく品質が優良と思わせる表示には、必ず明確な合理的根拠が必要です。
  • 最上級の表示は原則的にできません。
    製造方法、原産地、成分、品質などについて最上級の表現を使う場合は、明確な根拠が必要です。最高、最適、日本一などの表示がそれにあたります。
  • 太古、古代、昔ながらなどの歴史性を表示する時も根拠が必要です。
  • ○○推薦、○○賞受賞などは、事実証明などの根拠が必要です。
  • 健康、美容に効果がある表現はできません。「うがいに使えます。」など極めて一般的な表現では、その塩だけが効果があるような記載でなければ認められる場合があります。本などに「塩水のうがいは風邪の予防に有効です。」という特定の製品を示してない記述は違反ではありません。
  • 他社製品の誹謗中傷となる表示はできません。

15)「しお公正マーク」について (規約・規則第10条

「しお公正マーク」は、食用塩公正取引協議会の審査委員会に表示が規約に合致していることを認められた商品に限り付けることができます。マークを付けることは義務ではありません。

16)猶予期間 (付則

規約が施行(改定)された時、塩は賞味期限がない食品のため在庫期間が長いことから、他の食品の規約より長い2年間の猶予期間が認められています。その間に新しい表示に切り替えることになります。但し、食品表示基準の改正による変更については、法令の猶予期間が長いため、それに合わせた猶予期間となっています。

ページトップに戻る